消化管疾患

炎症性腸疾患

はじめに

炎症性腸疾患とは免疫反応の異常により、腸で過剰な炎症が起きてしまう病気です。主なものに、潰瘍性大腸炎とクローン病があります。炎症が起こる原因ははっきりしていないことが多いです。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、基本的には直腸から始まり、徐々に口側へと広がっていきます。大腸の粘膜に炎症が起きるため、下痢や血便、発熱などが現れます。炎症が激しい場合には、大量に出血したり、腸に穴が空いたり、腸内にガスや毒素が溜まって大腸が膨張する(中毒性巨大結腸症といいます)ことがあります。このような場合には緊急手術が必要になることがあります。
また、長く炎症が続くとがん化するリスクが高くなると言われています。

クローン病

クローン病は口から肛門までどこにでも起こる可能性があります。多いのは回腸(小腸の最後の部分)と大腸です。炎症や潰瘍が飛び飛びにでき、下痢と腹痛をおこすことが多いですが、症状は患者さんによって様々です。炎症が進行すると、腸が狭くなったり、穴が空いたり、腸管同士や皮膚との間に穴が繋がったりすることがあります。このような場合に手術が必要になることがあります。

診断・治療の流れ

消化管内視鏡検査(大腸カメラ、小腸カメラ)

内視鏡を肛門から、もしくは口から挿入して消化管の中を直接確認し、組織を一部採取したり(生検)、疾患の診断につなげることができます。

潰瘍性大腸炎

クローン病

CT(コンピュータ断層撮影)・MRI(磁気共鳴画像)など

X線や磁気を利用して、腸管や全身の炎症の広がりや感染の状態を確認します。
様々な検査を行って、最適な治療方針を決定します。

治療

当院では、消化器内科と連携して炎症性腸疾患の治療にあたっています。
炎症性腸疾患の治療の基本は薬物療法ですが、時に手術が必要になることがあります。潰瘍性大腸炎では、大腸粘膜ががん化することがあるため、大腸全摘が必要です。肛門近くまで大腸を切除し、一旦は人工肛門を造設しますが、状態が落ち着いた頃(3~6ヶ月程度)に人工肛門は閉鎖します(二期的手術)。当科では積極的に腹腔鏡での手術を行っています。また、できるだけ自身の肛門を残せるような手術に力を入れています。
クローン病では何回も手術が必要になることがあり、腸管をできるだけ長く残せるように、適切な手術時期と手術の方法を内科と連携しながら検討しています。

退院後の生活

下痢

大腸全摘を行った場合には、下痢になりやすくなります。時間が経つにつれて落ち着いてくることが多いですが、下痢止めなど内服薬を使って調整していきます。

腸閉塞

おなかが痛い、おなかが張る、吐き気がする、吐いたなどの症状が出たら、腸閉塞かもしれません。原因は傷口やおなかの中の傷に腸が癒着して、腸がつまってしまう(閉塞する)ことで起こります。また消化に悪いものを食べるとそれが詰まって腸閉塞になることがあります。注意が必要な食べ物を以下に挙げますが、これ以外の食べ物でも詰まることがありますし、逆に食べても大丈夫な方もいます。

  • キノコ類
  • わかめなどの海草類
  • イカ、貝
  • 繊維質の多い野菜(ごぼうなど)

原則として入院が必要です。治療は鼻から胃に管を入れたり、絶飲食、点滴が基本ですが、場合によっては緊急手術が必要になることがあります。

食事について

直閉塞の予防だけでなく、腸の炎症を悪くしないためにも、食事の内容や食事の取り方に注意が必要です。管理栄養士もチームの一員であり、食生活について一緒に検討します。

退院後の治療

通院について

炎症性腸疾患、中でもクローン病では手術の後も内科での治療を継続することが必要です。炎症を繰り返すことが多いため、しっかり治療を続けましょう。
また、潰瘍性大腸癌では大腸粘膜にがんができることがあります。定期的に内視鏡検査などを行いましょう。

若い方が発症することが多く、病気とのつきあいも長くなります。中には再度外科的手術が必要になることがありますが、内科の先生と連携を取ってスムーズに、最適な治療が行えるように心がけています。

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